概念 フランス・ヴァーミューレン
ハーネマンが『オーガノン』のアフォリズム119の中で言っています。’すべての植物は、外形から、その生態から、成長の仕方までそれぞれが違うのは確かなことのように、それぞれの種類の植物がその味や匂いが違うのは、それぞれの鉱物や塩が違う化学様式を持っているのと全く同じことである。「こうした特性があるだけでも、すでにとり間違いを完全に防ぐことができるといえるだろう」つまり、患者の中にある病変はそれぞれ違っていて、そのパターンは分化しているーその結果として、治療の効果自体も多様化している。」
ハーネマンは、脚注の中で「こうした作用を厳密に見分け、評価することのできる詳細な知識を持っている人ならば、一つ一つの物質が、それぞれの人に違った効果をもたらすということは容易に理解できるだろう。一つ一つのレメディは同質ではなく、代用物になるものは存在しないのである。」
つまり、我々ホメオパスは、とても注意深くレメディを見分ける義務があります。それは、ハーネマンの言う、「疑いの余地がない真実」だからです。一方、それは建前上は真実ですが、日々のプラクティスという現実は違います。「注意深くレメディを見分ける」には、2つのことが求められます。植物の違いを見分けるための正確な植物学の知識と、それぞれの植物が何を引き起こすのか、何を治癒するのか、という本当に微細な違いを正確に抜け目なく観察する力が必要なのです。これは本当に高い要求で、植物学の科学と個別の資質の両方に依存するものだからです。ハーネマンの時代から比べると、科学全般が飛躍的に進歩し、植物の生物学、化学的性質、系統学に関しても、大きな前進をしたと言っても過言ではありません。
植物の分類と植物の命名は早い段階で発達してきましたが、体系的な一貫性からは程遠いものでした。これだけ多くの古い植物の名前が公式の植物学の2名法の命名法システムとは一致しない現実を物語っています。例えば、アトロパ・ベラドンナはベラドンナとして知られ、ダトゥラ・ストロモニウムはストロモニウム、ソラナム・ダラカマラはダラカマラといったようにです。2つの名前を持つということは、最初に属を、二番目に種を示すことで、分離と集合という正反対のプロセスには大きな助けとなりました。属名は集合させるのに役立ち、ある特定の名前は、分離をさせるのに使われます。例えば、ストロモニウムがダトゥーラ・ストロモニウムだと知っていることは、ダトゥーラ・メテル、とダトゥーラ・フェロックスはレメディとしてはとても近しい関係であるので、最初に比較する対象になります。同様に、ジャガイモ「ソラナム・ツゥベロスム」、トマト「ソラナム・ライコペシカム」、ナス「ソラナム・メロンゲナ」はダラカマラにとても近いことが、もし二番目の名前がソラナムの種を示していることを知っていれば、理解できるからです。このことから言える結論は、伝統的なホメオパシーの処方は、個別のレベルに対するものではなく、総称のレベルに対して行ってきたということです。
ここでの問題は、種を新たに分類して、まったく違う属に分類したり、時には科までさえも変えてしまうことがあるということです。ホメオパシーの植物のシステムはほとんどクロンキスト体系かダーグレン体系の分類を使ってきました。両方共が1960−80年代に確立されたもので、形態学、解剖学、細胞学的な形態、もしくは植物の外見的な特徴をベースにしたものです。特にクロンキスト体系は、詳細な遺伝学的な検証が可能になる1990年代までは何十年にもわたって幅広く受け入れられ、使われてきました。
1990年代後半には、系統的な植物学者の国際的グループからなる APGによって、統計学、すなわち植物のグループ間の進化的な関係性の研究に基づいた花を咲かせる被子植物の関係についての新しい知識が生まれました。このグループは分子タンパク質と、DNAの塩基配列と遺伝子のデータに基づいて新しい分類法を確立し、既存の分類体系の一部の関係を確認・明確化した一方で、他の分類体系を抜本的に改良することにもなりました。新しいシステムのAPG1に関する出版物は、1998年に発表され、その後、2003年にAPG2、2009年にAPG3と改定されていきました。
APGシステムの美しさと利点は、植物の遺伝的系統分類が、化学成分に応じた植物の種の製薬的な配列をベースにした研究結果だからです。
APGシステムの導入と、ファイトケミカル組成の概要説明はホメオパシーの分類学に多大な利益をもたらします。古典的な植物のプルーヴィングが、生理学的な作用と反応を引き出すために、ティンクチャーやとても低いポーテンシー、もしくは現物質を使って行われていたことを私たちは忘れるべきではありません(「’ダイナミック’=エネルギー・レベル」ではないということ)。こうして得られた生物学的な効果は、明らかに植物の化学成分に依存していました。系統学的に近しい植物や、植物の科同士は、化学成分的にも、薬理学的にもとても似通っています。よって、直すことのできる症状、その植物によって作り出される症状はとても似通っていると定義づけることができるはずです。
APGによる提案は、革新的な変化をもたらすことはすでに述べましたが、ホメオパシーの分類学にも同様に大きな効果をもたらすとも言えるのです。安定性は、無残にも壊され、新たに審査仕直し、分類しなおす必要がプラント・ファミリーには必要でしょう。
例をあげましょう。
- ジェルセミウムGelsemiumは、ロンガニエシーエ Loganiaceae「ヌックス・ヴォミカの科」から外され、それ自体の科を持つことになります。ジェルセミエシー(ゲルセミウム科)Gelsemiaceaeはアポシネーシーエ(キョウチクトウ科)Apocynaceaeに最も近く、植物学的にも、症状学的にも、この科に含められるからです。
- キュラーレCurareは、ロングガニエシーエ (マチン科)Loganiaceaeから外され、メニスパメーシーエ(ツヅラフジ科)Menispermaceaeに属します。化学成分と生理学的効能が後者にとても似通っているからです。
- 以前は多くの属が属する大きな科だったスクラフォラリエーシーエ(ゴマノハグサ科)Scrophulariaceaeは、他の科に移されました。ジギタリスDigitalis、グラティオラGratiola、ヴェロニカVeronica は、プランタジェネーシーエ(オオバコ科)Plantaginaceaeに、ユーフレイジア(ユーフラリア_Euphrasia、ペディキュラリス(シオガマギク)Pedicularisは、 オロバンチェーシーエ(ハマウツボ科)Orobanchaceaeに、一方バッデリア(フジウツギ)Buddleja、スクラフォラリア(ゴマノハグサ)Scrophularia、ヴァーバスカムは、スクラフォラリエーシーエ(ゴマノハグサ科)Scrophulariaceaeのまま分類されることになりました。
- プルサティラPulsatillaの属は、アネモネに属することになり、以前のプルサティラの種は、今ではアネモネになりました。
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過去にリーダムと呼んでいた植物は、 ロードデンドロン(シャクナゲ)Rhododendronになりました。
化学の分類学、植物生物学、植物化学、薬理学は過去の世紀に大きく変わりました。ホメオパシーは、この統合に少々の遅れを取っていますが、それも今は統合への道筋にあります。過去20−30年の間に、より特徴的で、より個人化された処方を目指す方向性へのムーブメントが間違いなく起きているからです。
「プラントー植物のファミリー(科)の視点から見たホメオパシー」」は、総体的な視点から、より特徴的な視点に変化していくための実例を挙げ、それが円滑に進んでいくための手助けをするように描かれています。
フランス ヴァーミューレンの本はこちらから購入できます。
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ABOUT HIS BOOK- PLANTS- HOMOEOPATHIC AND MEDICINAL USES FROM A BOTANICAL FAMILY PERSPECTIVE
彼の本についてー「プラントー植物のファミリー(科)の視点から見たホメオパシー」
本の構成は下記の通り
1)すべての植物は現在の科学名が付けられている。加えて、類似名とホメオパシーの名前も列記してある。
2)植物の分類は、APG2をベースにしている。
3)形態学的、生物学的、文化的、化学成分的、医学的、薬理学的な側面をそれぞれの植物について十分かつ
詳細に説明している。
4)オリジナルの原稿が手に入らない場合、症状は、アレン、ヘリング、ダイクとヒューの百科事典から手を加
えることなく、オリジナルのプルーヴィングから抜粋している。
5)すべてのプルーヴィングの症状、毒性学的症状、臨床結果すべてを参照している。
6)レメディは、2010年のレパートリー版の時点で、正しい科、目、グループ訳がアルファベット順記載さ
れており、現地語名、略語、症状の数を含めている。
7)文献による間違いは指摘しているか、訂正してあるか、もしくは訂正を提案している。
8)マテリア・メディカもしくはレパートリーに見受けられないプルーヴィングはその旨記して記載してある。
事実とデータ
プラント・キングダムは、ホメオパシーで認識されている5つのキングダムの中で最も大きなものである。
2000種類以上の植物のレメディが様々なマテリア・メディカ、レパートリー、百科事典、薬局方に挙げられている。
これら全ての植物を詳細な本にするには4巻の本が必要である。
全てのレメディはAPG3をベースに分類分けされている。
139のグループは、下記のように細分類されている。
- 116科「名前の最後が–ceaeで終わるもの」
- 17目「名前の最後が–alesで終わるもの」
- 4門ーファーンズ(シダ類) Ferns 別名、白癬菌類Pterophyta):ネトファイタ(網状藻類Gnetophyta):ライコファイタ(Lycophyta):モス(ヒカゲノカズラ)(Mosses)(別名コケ植物門 ブライオファイタBryophyta)
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2つの行動群:食虫植物と寄生植物
2027種の植物のレメディのうちの714(35.2%)は1つかもしくはそれ以上のプルーヴィングがなされている。特に大きな科の植物は、最大6つの違ったプルーヴィングが実施されている。プルービングは、小さなグループから大きなグループのプルーヴィングまで様々で、短期間の単独実験から、男性だけのプルヴァーが参加者で、あえて女性は参加させていないもの、事実上全く影響もないものから、樹の皮と葉っぱを咀嚼し、匂いを嗅ぎ、花を触る事で行われたものから、ティンクチャーの過剰投与や、単回の投与、一瞬のかなつから、何ヶ月にもわたる観察から、何の変哲もない記録から、個人個人の詳細に渡った描写があるものから、細心の注意を払ってプルーヴィングのプロセスを執り行っているものから、超短期間なものから、ホリスティックなものまで、ありとあらゆるレベルのプルービングが行われている。
植物のプルーヴィングは合計1176回行われていて、そのうち747がトラディショナル(ハーネマン式の)もので、380は自己実験的、27がメディテーション・プルーヴィング、18がドリーム・プルーヴィング、4つのC−4トリチュレーションであった。
166のプルーヴィングは、新しく、見過ごされていて、マテリア・メディカにもレパートリーにも反映されていない。
大きな科と目の植物は、プルーヴィングも一番多くなされている。
- アピーエシーエ(セリ科)Apiaceae『旧名 アンブリフェリーUmbelliferae』69レメディ、40プルーヴィング、自己実験16、その他24
- アポシネシーエ(キョウチクトウ科)Apocynaceae 57レメディ、42プルーヴィング、自己実験17、その他25
- アストレーシーエ(キク科)Asteraceae 『旧名 コンポージテCompositae』154レメディ、80プルーヴィング、自己実験31、その他49
- ブラシカレス(アブラナ目)Brassicales 50レメディ、18プルーヴィング、自己実験6、その他12
- キューカンバティエシエ(ウリ科)Cucurbitaceae 23レメディ、23プルーヴィング、自己実験8、その他15
- ユーフォビエシエ(トウダイグサ科)Euphorbiaceae 51レメディ、25プルーヴィング、自己実験8、その他17
- ファベシエ(マメ科)Fabaceae 『旧名 レギュノメシエ Leguminosae』 134レメディ、64プルーヴィング、自己実験13、その他51
- ラーミエシエ(シソ科)Lamiaceae『旧名ラービアテ Labiatae』
- 99レメディ、30プルーヴィング、自己実験9、その他21
- パパヴェラシエ(ケシ科)Papaveraceae 36レメディ、22プルーヴィング、自己実験5、その他17
- ピナレス(マツ目)Pinales 49レメディ、35プルーヴィング、自己実験1、その他34
- ポーアレス(イネ科)Poales 51レメディ、16プルーヴィング、自己実験2、その他14
- ラノンキュラシエ(キンポウゲ科)Ranunculaceae 59レメディ、53プルーヴィング、自己実験24、その他29
- ロゼシアエ(バラ科)Rosaceae 63レメディ、31プルーヴィング、自己実験5、その他26
- ルビエシエ(アカネ科)Rubiaceae 53レメディ、28プルーヴィング、自己実験10、その他18
- ルーテシエ(ミカン科)Rutaceae 29レメディ、30プルーヴィング、自己実験16、その他14
- ソレナシアエ(ナス科)Solanaceae 53レメディ、45プルーヴィング、自己実験19、その他26
ほぼすべてのプルーヴィングされたレメディは、臨床的にも症状が観察されています。
67のレメディの症状像のうち、全体の約3.3%が中毒症状だけをベースにしています。
全体の25.7%にあたる521レメディは、臨床から観察された症状だけしかなく、プルーヴィングからは症状を証明されていません。折衷主義の医師による経験主義的なレメディの使用「ボーリックによく見られる」、ハーブの使用、民間療法での使われ方、どのようにして得られたのかが不明なホメオパシーの使用に至るまで様々なものが含まれています。
残りの725のレメディは、マテリア・メディカの中にまだ症状が含まれていません。にもかかわらず、それらは完全に説明されているため、有用な情報を収集することができます。レメディが属する科、目によって、またそのレメディの使われ方によって、潜在的な使い方を推測することができます。モデルとなるレメディは、常にそのグループの中で最も症状の多いレメディです。そのようなレメディは必ずレパートライゼーションをすると一番に上がってきます。ポリクレストとして知られているレメディたちがそのレメディです。モデルとなるレメディは、その一部がそのグループのテーマを表し、一部がに個別の特徴を表します。症状の一部分は、そのグループを貫く症状となり(そのグループのレメディのほとんどが同じ症状を持つ)そして一部は特異的なものとなります(そのレメディだけに現れている典型的な症状)。